RTA(リアルタイムアタック)の世界では、かつて一世を風靡したタイトルがいつの間にか下火になることがあります。一方で、発売から数十年経ってもなお熱狂的な人気を保ち続けるタイトルも存在します。この違いは一体どこから生まれるのでしょうか。今回は海外掲示板Redditに寄せられた、走者たちの生の声を元に“RTAのシーンが衰退する原因”について深く掘り下げていきます。
スレッドタイトル
What Kills Interest in a Speedrun Scene/Game?
日本語訳:
スピードランのシーン/ゲームへの関心を失わせる要因は何か?
本文
As you know, quite a few of the old standbys are a lot less popular for speedrunning than they used to be. The Legend of Zelda: Ocarina of Time and Majora’s Mask are the most common examples, but I recall some of the interest in GoldenEye and some of the earlier Pokemon games has died down a bit too.
So, that made me wonder… what does kill interest in a game from a speedrunning perspective? What causes a community to lose interest in speedrunning a game altogether?
Is it when runs are so optimised there’s barely any room for improvement, like in the original Super Mario Bros?
Is it when a glitch completely changes the feel of the game and removes most of the original gameplay, like Arbitrary Code Execution in Ocarina of Time and Majora’s Mask?
When games get repeatedly patched and major exploits broken before they can be explored to their fullest (Tears of the Kingdom was in this situation for a while)?
How about when a glitch or trick is so easy and overpowered that doing well becomes almost trivial, like Mario & Luigi: Paper Jam and glitches like walk through walls, Instant Battle Glitch (win any battle by dying), etc?
What things cause interest in a speedgame to die down?
日本語訳:
ご存じの通り、かつて定番だったタイトルの多くは、以前ほどスピードランの人気が高くなくなっています。『ゼルダの伝説 時のオカリナ』や『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面』が代表的な例ですが、『ゴールデンアイ』や初期のポケモンシリーズに対する関心も、少し下がってきているように思います。
そこで疑問に思いました。スピードランの観点から見て、ゲームへの関心を失わせる要因とは何でしょうか?コミュニティがそのゲームのスピードランから完全に離れてしまう原因は何なのでしょうか?
例えば、初代『スーパーマリオブラザーズ』のように、走りが極限まで最適化されてしまい、ほとんど改善の余地がなくなったときでしょうか?
あるいは、『ゼルダの伝説 時のオカリナ』や『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面』における任意コード実行(ACE)のように、グリッチによってゲームの感覚が大きく変わり、本来のゲームプレイの大部分が失われてしまったときでしょうか?
それとも、『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』が一時そうだったように、アップデートが繰り返されて主要なバグや抜け道が十分に研究される前に修正されてしまう場合でしょうか?
また、『マリオ&ルイージRPG ペーパーマリオMIX』の壁抜けや即戦闘勝利(わざと倒されることで戦闘に勝つ)といったグリッチのように、あまりにも簡単かつ強力すぎて、うまくプレイすること自体がほぼ簡単になってしまう場合はどうでしょうか?
スピードランにおいて、ゲームへの関心が薄れていく原因にはどのようなものがあるのでしょうか?

多くの人を巻き込みスレッドが盛り上がっていました
さまざまな観点から議論されていた内容を要約してお伝えします
1. 極限まで最適化された結果としての“運ゲー”化
RTAの競技性が高まりすぎると、皮肉なことに走者の意欲を削ぐ原因となる場合があります。なぜなら、人間の操作技術で縮められるタイムが限界に達したとき、残された壁は“運(RNG)”だけになるからです。
例えば、『ポケットモンスター ハートゴールド・ソウルシルバー』のAny%(バグ制限なし)カテゴリを例に挙げてみましょう。ある走者によれば、このカテゴリのトップランナーたちはレッド戦のフシギバナを急所で倒す(※)という極めて低い確率の事象を引くことで記録を更新しています。
※急所を引く確率は“1/16”であり、ラスボス戦で急所を引く乱数調整法は確立されていない。
しかしながら、このような記録に挑戦するためには、数時間を要する完走の直前で何度もリセットを繰り返さなければなりません。したがって、どれほど技術を磨いても運が味方しなければ勝てないという状況が、新規走者の参入やベテランのモチベーション維持を困難にしているのです。
2. “勉強”になってしまった学習コストの増大
ゲームの攻略法が進化し続けることは、本来であれば喜ばしいことです。ところが、その進化が“習得の難易度”を跳ね上げてしまうケースも少なくありません。
パズルゲーム『Peggle』のコミュニティでは、かつて数日で学べた戦略が、今では数週間の学習を必要とするほど複雑化しています。具体的には、以前は数個だった“1ピクセル単位の精密ショット”が、現在の世界記録ペースでは150箇所以上も要求されるようになりました。
その結果、多くの走者が「これは遊びではなく仕事のように感じる」と吐露し、シーンを離れていきました。つまり、チャートの難易度が個人の許容範囲を超えてしまうと、情熱は急速に冷めてしまうのです。
3. バグの発見が“ゲーム性”を破壊する瞬間
RTAにおいて画期的なバグの発見は大きな盛り上がりを見せますが、一方でそれが諸刃の剣となることもあります。特に、任意コード実行(ACE)のような強力すぎるバグは、ゲームの本来の姿を大きく変えてしまいます。
『ゼルダの伝説 時のオカリナ』や『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面』では、ACEによってゲームの大部分をスキップすることが可能になりました。しかし、これにより“本来のゲームプレイを楽しみたい”と考える走者たちが離脱する要因にもなりました。
さらに、『マリオ&ルイージRPG ペーパーマリオMIX』で見つかった“壁抜け”や“負けた瞬間に勝利扱いになるバグ”のように、あまりにも簡単で強力な技は、競技の緊張感を奪い、攻略を単調なものに変えてしまいます。
4. アップデートによる“環境破壊”への懸念
近年のタイトル特有の問題として、開発元による頻繁なパッチ修正が挙げられます。『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』がその典型例です。
RTA走者が画期的なグリッチを発見しても、すぐに修正パッチで封じられてしまうと、そのルートを追求する意欲が失われてしまいます。そのため、バージョン固定が難しい現代のゲーム環境では、コミュニティが安定したルールを確立する前に熱が冷めてしまうリスクを常に抱えています。
5. 衰退ではなく“分散”と“ランダマイザー”への移行
一方で、特定のタイトルの人気が落ちたように見えるのは、シーンが成熟した証拠であるという見方もあります。
例えば、『ゼルダの伝説 時のオカリナ』などの旧作は、伝統的なRTAの人気がランダマイザー(アイテム配置などをランダム化するMOD)へと移行しています。また、かつてはリソースが豊富な有名タイトルに走者が集中していましたが、現在はどのゲームでもDiscord等で簡単に情報を得られるようになりました。
その結果、走者たちは“有名だからそのゲームを走る”のではなく、“自分が本当に好きなゲーム”を自由に選べるようになりました。つまり、シーンの総人口は増えていても、特定のタイトルに留まる人数が減っているだけというポジティブな側面もあるのです。
まとめ
RTAのシーンを維持するためには、技術の向上と“走る楽しさ”のバランスが極めて重要です。最適化が進みすぎたゲームは、運要素や学習コストの壁によって人を遠ざけます。しかし、ランダマイザーのような新しい遊び方の提示や、情報の共有によって、その形を変えながら愛され続けることも可能です。私たちが愛するゲームを“競技”として長く楽しむためには、コミュニティが常に変化に適応していく必要があると言えるでしょう。


